私家版 卒業論文(研究)の道しるべ

(唐突ですが、天下り的に)卒業論文をかかないといけないわけです。その心得 というほどではないですが、これくらいは押えておいてほしい、ということをま とめておきます。

そもそも研究とは

論文を書くためにはその題材となる研究をおこない、成果を得た、というのが大 前提です。では研究とは、というのは研究者によっていろいろ定義があろうか、 とは思いますが、私見では

 なにかしら今まで無かった物事を見出す 

ということにつきるんじゃないか、と思ってます。言葉をかえると、(他人の 成果の丸写し・後追いだけではだめで)なにかしらのオリジナリティ が必要、ということです。で、論文にはそれを世間(他人)にしらしめる、 という意味があるわけです。まず、これを第1にしっかりと理解しておいてく ださい。
現実問題として、学部4年での卒業研究についてはあまり厳しいことは追及さ れませんが、こころざしは高く持ってください。大学院では、当然のこととし て具体的に学術研究発表に耐えるか?という観点から徹底的に評価されます。

じゃぁ、論文とは

そうすると、論文の要件も見えてきます。端的にいうと

「オリジナリティ (新規性、独創性)」 「客観性(論理性)」

です。つまり、

卒業論文への取り組み方

とはいっても、いままで、研究活動というより論文を執筆したことが無い人がほ とんどだと思うので、具体的にどうすすめればいいのかピンとこないと思います。 そして実際、これまで接した学生さんのうちの(少なくない)何人かの人たちは そうでした。そこで、こういう風にすすめればいいんじゃないか、ということを まとめておきます。
ただし私はねっからの理工系の人間なので、いわゆる文系的な研究についてはお おまかなことしか述べられませんが、あしからず。
  1. まずはなんといっても、テーマ設定です。正直なところを言うと、 これに苦労する人が毎年ほとんどです。

    これは上述の通り、「仮説」を立てる、ということになると思いま す。その仮説にたいして、調査したり実験したり、あるいは解決するシステム を作ってその課題を検証する、ということになります。

    基本的姿勢として、自分の興味の持てることでないと続かない、というのが持 論なので、自分で探究してみたい、という事柄を頑張って見つけましょう。コ ンピュータに関連するもの・しないもの、特にこだわらなければ趣味など自分 の普段の生活に、きっと何か深く掘り下げてみたいものがあるはずです。逆に、 これが出来たら(学部レベルの卒論の場合は)半分くらいは終わったようなも のです。

    卒論に限らず、人に言われたことだけをこなす yes-man ではなく「自発的に何 かに取り組む」ことが出来るように是非なって欲しいと思うものです。
    個別事例については要相談ですが、個人的には公序良俗に反しないかぎりどんな ことでも(取り組み方次第では)卒業研究たりえると思っています。

  2. テーマが決まれば、そのテーマに関する 調査 をおこないます。上 で述べているように客観的に論じるためにはそれまでの事例との対比になるわけ で、その対照となる文献・データ等が不可欠です。その場合、かならずその文献 等自体の情報(書誌事項)を控えておかないと、あとで参考文献としてあげるこ とができなくなるので、気をつけてください。最近だと WWW で調べるというの もあると思いますが、その場合はURL とともに(無くなったりすることもあるの で)何時そのページをチェックしたかも必ずメモしておきましょう。
    ちなみに、URL さえわかれば、もしページが無くなっても http://www.archive.org/ 等で過去の ページの検索が可能です。
    特に文系ネタの場合は、この調査がしっかり出来ていないと、自分の論を展開す る根拠が無くなってしまって、結果として論文としての体裁が整わなくなる=論 文じゃなくなるので、しっかり資料を収集・整理してください。

  3. 理系の場合は、実際にシステム作り・実験をおこなって、あらたな知見をえられ るように頑張ります。とはいえ、学部レベルでは1からシステムを組むのは無理 な場合もあるかもしれませんので、上で調査した興味あるシステム(プログラム) をインプリメントしなおす、とか、それをさらに改良する、ということが多いで しょう。その場合には、特にその改良点を論文できっちりと(元のものと分けて) 主張する必要があります。

    文系ネタの場合は、集めた資料から、自分なりの分析をおこない、オリジナリティ のある主張を(論理的に)構成します。

  4. 以上で準備ができたら…あとは書くだけです!

論文の典型的枠組

よくある論文のパターンを示しておきます。分野などにより違いはあるかとは 思いますが、上で述べたことを文章の形でまとめるとこうなる、という感じで みておいてください。
  1. 序論:何について (for what)、何のために (why) 、何を(what) したか、 を簡潔に述べる
  2. 関連研究のレビュー:上の『何をしたか』がオリジナルであることを、 関連研究との比較において示す。
  3. 研究の中身:プログラムならアルゴリズム等、研究の手法を具体的・客 観的にどのように (how) おこなったかを述べる。
  4. 考察:プログラムなら処理データの解析等、研究の有用性(とあればデ メリット)を客観的にしめす。
  5. 結論:研究の総括と今後の課題について述べる。
ちなみに論文は啓蒙書ではないので、その分野に関するある程度の前提知識を仮 定してもかわまない、というか、そうしないと簡潔に論じることができないです。 意味も無く、くどくどと不必要な説明をおこなうのは論文ではないので注意して ください。これに関連して、日本語の論文では(簡潔をむねとするので)「です・ ます」調ではなく「である」調で書くのが原則です。

参考文献リストについて(補足)

参考文献リストでは、参考にしたり引用したりした文献をリストアップして、論 文の読者の参考にするとともに、その研究の検証を可能とするものですので、な おざりにしてはいけないです。パターンとしては(項目の順序についてはある程 度の自由度があるかもしれませんが);

参考文献(とりあえず)


講義用スタイル
印刷用スタイル