インターネットことはじめ
(コンピュータネットワーク入門)
Internet とは?
-
inter〜 = 〜の間の
-
net = ネット、網
⇒ネットワークとネットワークの間をつないだ、ネットワークの集合体
(The) Internet でいわゆるインターネット(世界規模のコンピュータネット)を表します。
インターネットの起源
アメリカ国防総省・高等研究局(ARPA: Advanced Research Project
Agency )
が冷戦時代 の危機管理の一つとして「いくつかの都市が壊滅
しても全体としての通信ネットワークを確保する」ための実験として
...と言われることが多いのですが、 (ARPA の研究資金であることは確かです
が)危機管理とは直接の関連はない、という説もあるようです。
アメリカ
国内の4大学
- UCLA (University of California, Los Angeles カリフォルニア大学ロサンゼルス校)
- SRI (Stanford Research Institute スタンフォード大学研究所)
- UCSB (University of California, Santa Barbara カリフォルニア大学サンタバーバラ校)
- University of Utah (ユタ大学)
を接続しました。
⇒ARPANET := 1969年12月 に誕生、とされています。
日本に関して言うと、 1984 年に東京大学・東京工業大学・慶應義
塾大学をつないだ JUNET (Japan University NETwork) が日本の
インターネットの最初とされています。
インターネットの特徴
-
大学、企業、プロバイダなどの(組織)ネットワークがお互いに結ばれて
全体として1つのネットワークのように振舞います。
- 接続経路は複数 ⇒ 一部が切れても大丈夫(接続性が高い)
- ネットワークを流れるデータは
小さな塊(パケット) に分けて送られます ⇒ 転送エラーが起こっ
ても、そのエラーがおこったところだけ再送すればよいわけです。
大きな塊のままデータを送ると、途中でエラーがおこった場合、全部送り直し
になってしまい、効率が悪くなってしまいます。
-
インターネットは特別な組織や管理者がいてネットワーク全体を運営して
いるわけでは無い です。インターネットを使うためにどこかの組織に料
金を支払うということはありません。とはいえ、調整する組織はあります(そ
うでないと、混乱してしまう。詳細は後述)
- その代わり、通信しようとした相手とうまく情報を交換できなかったとし
てもその保障をどこかが責任持って行ってくれるわけでも無い です。
-
インターネットを利用する機関は その機関の内部及び直接接続している
近くの機関 とのネットワークの設備についてのみ責任を持ちます
(互助会的?!) この点は電話や郵便などのシステムとは全く異なりま
す。
光回線・ケーブルを通じて通信するために、電話会社やプロバイダへの料
金を払う必要はありますが、これはインターネットそのものの使用料ではないこと
に注意が必要です。
-
上述のようにインターネット全体を管理運営する組織はないですが、 最低限
必要な調整を行う組織 は存在します(後述)。機関に割り当てる
ドメイン名(電子メールのアドレスや、WWW の URL などのベース)
や、 インターネットに接続するIPアドレス(計算機=ホストマシン
のネット上での登録番号) が かち合わないように調整してくれています。
- とはいえ、近年インターネットの肥大化および社会的重要度が増すにし
たがい組織もどんどん整っており、実質的に組織的に管理運営されている、と
言ってもいい状況になりつつあります。
インターネットの主要組織
時代にそっていろいろ変化をとげていますが、現状は、おおよそ以下のような
ものになっています。
-
ISOC (Internet SOCiety) はインター
ネットの法律や組織的な政策事項に責任を持つ組織で、配下にインターネット
の増大する諸問題の解決にあたる IAB
(Internet Architecture Board) があり、その下には2つのタスクフォー
ス/運営グループ{標準化のためのIETF/IESG, 技術研究のためのIRTF/IRSG}
と、管理組織 IANA があります。
- IANA が行う実務的なインターネットの管理は各地域の組織である
InterNIC/ARIN, RIPE/NCC, APNIC などで行われています。さらに、その地域組
織の傘下に国・地域別の組織があります。日本のものは
JPNIC です。
JPNIC のサイトにある組織図が参考になるでしょう
- ICANN はIANA の
管理機能であるIPアドレス、ドメイン名およびプロトコル/ポート番号をISOC
下ではなく国際的な非営利民間組織の枠内で担当/管理するために生まれた組
織ですが、実質的作業は IANA の技術作業チームが行っています。
-
現在は個人の対応についてはいわゆる レジストラ (お名前.com 等)
に業務委託をおこなっていますが、過去には一般ユーザが直接 JPNIC とやりと
りをしていました(経験あり)
ネットワークの物理的接続
- 通信を行うためには、物理的な電気信号をコンピュータ同士でやり取りで
きなければなりません。
- しかし、インターネットにはそうした通信のための標準の(物理的)手段
は一意に定められてはいません(とはいえ無限に可能性があるわけではなく、
いくつかの手段のうちの一つということではあります)。
- とにかく近くにある別の機関との間を、最も都合のよい方法で結べばよ
いことになっています。
ネットワークの論理的接続
-
コンピュータ間の通信を行うためには、 単に電気信号を送り合えればいいと
いうわけではなく、それを情報として解釈するための共通の約束(プロト
コル)が必要 です。
- この点に関しては、今日のインターネットは必ず TCP/IP とい
うプロトコルを使うことになっています。言い方を変えると
TCP/IP でつながっている世界中のコンピュータのネットワークが
「インターネット」だ、ということです。
- つまり TCP/IP は、(学術界での英語と同様?)いわば世界中
のコンピュータが会話をかわす時の共通語なわけです。
但し、初期の頃は TCP/IP ではなく、別のプロトコルであったことに
留意しておく必要があります。TCP/IP は 1974 年 に発表されました
が、実際に普及したのはもうすこし後です。
1981年 にはアメリカ合衆国のカリフォルニア大学バークレー校 (UCB) で、
TCP/IPがOS の一部として組み込まれた「 BSD UNIX (4.1 BSD) 」が
開発され、1982年 にはDCA(現DISA)とARPAがARPANETのために、
TCP/IPとして一般に知られている一揃いのプロトコル、TCP およびIP を確定し
ました。現在では、インターネットの定義のひとつは「特にTCP/IPを用いて接
続されたネットワークの集合」であり、インターネットは接続されたTCP/IPの
インターネットとされるようになりました。
ちなみに1983年にはARPANETが接続手順に使用していたNCP(Network Control
Program) を正式にTCP/IPへ変更し、Sun Microsystems (現オラクル、今では
Java の本家としてのほうが有名かも)が一般ユーザ向けの製品(ワークステー
ション)としてTCP/IPの提供を開始し、また UCB がTCP/IPが組み込まれ
た 4.2 BSD をリリースしています。 また同年には UNIX
(AT&T 由来の元祖のほう) にTCP/IPが組みこまれ、これが「UNIX
= インターネット」のイメージの始まりとされています。
さらにちなみに、この UNIX (固有名詞的存在)というものは(商業的実体と
して)紆余曲折をへてまだ存在しますが、なかなか本物(?)にふれる機会は
ないかもしれません。我々が手にする機会が多いと考えられるのは、その思想
を受け継いでいる(ソフトウェア的には別もの?の、だけど unix系と呼ばれる
ことが多い) Linux やmacOS (Mac OS X) です。
ネットワークとプロトコル
そもそもプロトコルとは何か、ということですが、(コンピュータに限らず)
通信をする際の 約束事(通信規約) のことです。
通信のための約束事というのは実はコンピュータネットワークにかぎったこと
ではなくって、例えば、人と人がコミュニケーションをとる際にも、音声
(空気の振動) により、日本語という文法 (これも規約と考え
ることができる)により通信(?コミュニケーション)が可能となっているる
わけです。みんながてんでんばらばらに、フランス語とかアラビア語をしゃべっ
たんではコミュニケーションはなりたちません。
別の例でいうと、我々が葉書(封書でも一緒)を出す場合に、ちゃんと約束事
に従ってます、よね。これも勿論通信です。つまり相手の郵便番号をちゃんと
7桁書いて(それも決まった場所=上に!)住所と名前もおおよそ決まった場
所(郵便番号の下)に書いて、切手も決まったところ(左上)にはって、ポス
トに入れる、という手順をふむわけです。これも立派なプロトコルです。この
約束を破ると、例えば住所を書かないと何処に届けていいかわからないし、切
手を貼らないと郵便は届けてもらえない、ということです。
くどいようですが、プロトコルすなわち約束事をまもらないと、情報は伝
わらない(伝えようがない) ということをここでしっかりと押えておい
てください。
プロトコルの階層
プロトコルといっても決めることは沢山あって、例えばケ−ブル・コネクタの
形状の決まりがないとそもそもお互いに差し込めるようにできないし、あとア
プリケ−ションレベルのデ−タフォ−マットも約束事=プロトコル
です。もしこういった規格が全て1つの約束事になってたら、ということを仮
に考えてみましょう。そうすると、もしケーブルでつないでたコンピュータを
無線にしようとしたら、無線LANの規格を含むプロトコルに総入れ換えしない
といけなくなります。手紙の例で言うと、郵便屋さんが乗ってるのが自転車か
バイクか車かによってあて先の書き方を変えなければいけない、という感じで
す。これは非常に面倒でかつ無駄なわけです。
もし自転車なら舗道のある道順を指定しないといけないけど畔道を通ることに
なっても大丈夫、とか、車なら高速道路のルートを教えてあげないといけない、
といった感じでしょうか?
そこで、ネットワ−クプロトコルを階層的に定義 して整理(モデリ
ング)する方法が一般的です。これをネットワークアーキテクチャ
といいます。このネットワーク(通信)の階層性を理解することが、以降のネッ
トワーク技術の理解の基本となります。ちょっとややこしいかもしれませんが、
是非しっかり学んでください。
手紙の例でいうと、我々は宛て先書いて切手を貼ってポストにいれるところま
でで、その先は郵便局がどうやって届けてくれるのか(集配の方法)は考える
必要はない、というわけです。つまり、「手紙を出す」ことと「郵便屋さんが
集配する」ことは階層が違う、ということなのです。次の階層に渡す方法、手
紙の例ではポストにいれるまで、をちゃんとやっておけば、(手紙がちゃんと
届きさえすれば)別の階層がなにをやってるかは(自転車で運ぼうが、トラッ
クで運ぼうが)関係ないというわけです。
また、同じ階層でも目的によって必要な規格も異ってきます。例えばもし郵便
が小包しかないとすると、年賀状とかも小包でださないといけないくなって不
便なわけで、目的に応じて葉書とか封書とかいろんなものが用意されてるわけ
です。コンピュータネットワークも同様で、email のプロトコル、WWW のプロ
トコル、などがあるわけです。
要点として;
- 「通信ができる」とは、プロトコルにしたがってデータ交換ができる 、
ということである。
- ある階層以上でプロトコルが一致していれば、それより下の層は一致してい
なくても通信は可能 である。
例えば、電話線でダイアルアップしようが、LAN
経由であろうが WWW は同じようにアクセス出来る。
- 逆に、如何に下の階層が全く同じでも、上の層が異なれば通信はで
きない 。というよりも、出来ると困る。
例えば、メールの情報とWWW
のデータが混ざって届くとわけがわからなくなる、というイメージ。
ということを押さえておいてください。
OSIの7階層について
ネットワークアーキテクチャの中で標準的なものが、ISO (Internatinal
Standardisation Organisation) が 1983 年 に示した OSI
(Open System Interconnection) の参照モデル です。
このモデルは Internet において実際に実装されているというわけではありま
せんが、ネットワークの階層性を理解・説明するのに便利で非常によく利用さ
れますので、ここでも述べておきます。
これは7つの階層からできています。
基本参照モデル | 上位層 | 第七層 | 応用層
| 応用プログラムや端末利用者にデータ通信機能を提供 |
---|
第六層 | プレゼンテーション層 | 異機種間のデータの
タイプや符号を変換する |
---|
第五層 | セション層 |
全二重、半二重、優先データ、送信機能、同期、再送機能などを提供 |
---|
下位層 | 第四層 | トランスポー
ト層 | データ転送品質(誤りの検出・回復)を保証 |
---|
第三層
| ネットワーク層 | 通信ルートの確立し、データを中継・転送す
る機能を提供 |
---|
第二層 | データリンク層 | 高信頼
の透過的なビット伝送を保証 |
---|
第一層 | 物理層 |
通信回線を介してビット単位の伝送を提供 |
---|
物理媒体
| 電気的な回路、回線、交換機など |
---|
|
それぞれの層の主な機能は、以下の通りです。ちなみに第1〜4層を下位層、
第5〜7層を上位層と呼びます。
- 応用層(Application Layer)
応用プロセスや端末利用者にデータ通信機能を提供する層です。
- プレゼンテーション層(Presentation Layer)
データの表現形式の制
御、、セキュリティの管理などを行う層。応用層が扱う情報をいかに効率的に
相手に伝えるかが重要となる。
- セッション層(Session Layer)
全二重や半二重という通信モードの管理、通信に必要な同期・非同期、障害からの
復旧などを管理する層です。
- トランスポート層(Transport Layer)
下位層の通信機能が充分でない時、独自に誤り検出/回復による高信頼化や
多重化・分流によるコストの低減、高スループット化などを行うための、
いってみれば上位層とのインタ−フェ−スの役割をはたす層です。
TCP, UDP がこの層に対応します。
- ネットワーク層(Network Layer)
目的の層までの経路選択と中継機能
により経路を設定、データを透過的に転送する、等の相互接続のための規定で
す。ネットワーク層のプロトコルの例としてはX.25の呼制御手順などがありま
すし IP もこの層と考えられます。
- データリンク層(Data Link Layer)
物理層から提供されるビット伝送
機能を用いて、高信頼の透過的なビット伝送を提供する機能を持ち、この中に
は多重化、フラグシーケンス、順序制御、誤り制御、フロー制御などがありま
す。データリンク層のプロトコルの例としては HDLC(High-Level Data Link
Control)ハイレベルデータリンク制御手順や CSMA/CD などがあります。
- 物理層(Physical layer)
物理層は、電線は当然として、マ
イクロ波や衛星、光ファイバなどの各種物理媒体を介して、ビット単位の伝送
を行うためのプロトコルで、信号レベルや伝送スピ−ド、あるいはコネクタ形
状なども含まれます。IEEE 802 シリ−ズ等もこれに含まれます。
ちなみに、インターネットの世界の標準プロトコル TCP/IP に上の7層をむり
やり(?)対応付けると、1,2 層目はごっちゃになって(代表として)データ
リンクの層として扱うことが多く、 3 層目がIP、4層目がTCP,UDP 、
5〜7層もまた併せて(代表として)アプリケーションの層として考えることが
多いです。データの流れのイメージは下図を参照参照してください。
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